京都の通訳ガイドEriの小話

”大切な人を大切な場所へ”をモットーに地元京都で通訳案内士をやっています。ツアーで出会った愛すべきお客様達とのエピソードや、改めて感じた京都、日本の魅力を綴っています。

桜と美女と侍帽子のお父さん

京都の桜を見に来られた南米のご家族をご案内。

母国語はスペイン語ということで、スペイン語ガイドの友達にアドバイスを仰いだところ、挨拶をBuenos dias!!って始めれば”つかみ”はOKやで、と教えてもらい朝のホテルでの待ち合わせ。

私:Bunenos dias!! セニョール!

父:Good morning!!  

あれ、私のスペイン語、めっちゃスルーやねんけど、、と、がくっとしながら、まずはお父様に挨拶。東京で購入してきたというお気に入りの”侍”帽子をかぶってニコニコ。

遅れて奥様。わぁー、めっちゃきれいな人や、、エキゾチックビューティー。

遅れて長女。めっちゃきれいやん。

遅れて次女。これまためっちゃかわいい。

最後に三女、17歳。おー、クールビューティー!

ということで、美女4人+ 侍帽子のお父さんとツアーがスタート。

行程は金閣龍安寺、二条城、清水寺祇園という定番コース。

とにかく桜の京都。どこもかしこも人だらけ。

観光スポットは、もうカオス。あらゆる国の人が入り乱れ、あらゆる国の言葉が飛び交い、もはや日本では無いのではないかと思う。

そんな中、普通に拝観しても、時間が押し気味になる上に、桜でテンション上がりあちこちで写真。

私のガイドトークはもはや誰も聞いておらず、お父さんは娘達の写真撮影に一生懸命。あらゆる場所で、

父:Girls!! 写真を取るぞ!

娘達:、、、はーい(渋々)

渋々やってきたわりには、カメラを向けるとポーズはばっちり、笑顔もばっちり。

その後、父と母がラブラブ写真撮影。

満開の桜、天気も最高!、とにかく写真を撮りたそうやから、今日はもう写真スタッフとして頑張ろうと私も切り替え色んな場所で皆さんをパチリパチリしていると

外国人男性:Hey Hey 美しいお嬢さん達、どこから来たの?

ちょっと、私のお客さんをナンパしんといてや〜と、思ったのもつかのま

気付けば一緒に肩を組んで写真撮影。

そんな事が何度も。。

 

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それにしても、ほんまに最高の時に来はったなぁ、ほんま良かったなぁと思い

私:数日前から満開になったので、本当にラッキーですね!一年で一番綺麗な京都をこんな素敵なお天気で楽しめますね〜

母:桜、東京で見れなかったら楽しみだわ〜

父:実は僕たちの新婚旅行は京都だったんだよ

私:えー!! それは素敵ですね〜! 今回はお嬢様達と一緒に2回目の京都なんですね♪ どこを訪れたんですか?

父:そんなの忘れたよ。昔のことだよ。

私:いや、昔っていっても、10年くらい前でしょ!?

母:あらやだ、そんな訳ないじゃなーい笑。一体私はいくつだと思ってるの?いくつに見える??

出た、、年齢クイズ、、子供の年齢から考えると45,46歳くらいが妥当やろな、、でもちょっと若めに、、

私:えー、、奥様は、、42,43歳くらいでしょうか?

母:そうよ!

あら、当ててもうた、、、おーっとと思い、子供達の方に目をやると

全員、スマホ。。。

歩くのが早いお父さんはスタコラ先へ。。

 

ツアーは公共交通機関を使っての移動。

行くところ行くところ混んでいるので疲れも溜まり気味。

バスや電車では、真っ先に空席を探して座るお客様。

1両しか無いローカルの市電に乗った時。

空席1つ。

長女、真っ先に席をゲット。

次女、しょうがなく姉の膝に座る。

三女、しょうがなく次女の膝に座る。

それはまるで、美女トーテムポール。

向いの席に座っていたおじいちゃんはブロンド美女トーテムポールに唖然。

周りのお客さんからも注目の眼差し。本人達はおかまいなしにスマホ

そして駅で電車を待つ時間。

ヒップを引き締めたいのよ、と突然3人でOne ,Two, Three ! とスクワットエクササイズ。これまたお婆ちゃんびっくり仰天。とにかくマイペースな美女達。

 

お父さんは、とにかく歩くのが速い。

清水寺へ向かう道、本来私が先陣をきらないといけないところ

父:Eri, 一番上までいけばいいんだよね?

私:はい、そうです。とにかく混んでいるので皆さんはぐれないようにしていきましょう。もしはぐれたらてっぺんで待ち合わせ、待っていてくださいね。

父:OK

すたすたと人混みをかきわけ進んで行く父。途中の土産物屋に立ち寄る母。着物をきている観光客に喜び写真を取る娘達。

みんな、バラバラなんですけど〜、、、

しょうがなく母と娘達を待ち一緒に坂を上がり、侍帽子を一生懸命探し、父と合流。

 

そんなご家族が、スマホもせず、じっくりと味わって、私の話をしっかり聞いてくれたのが”建仁寺”。行程には入ってなかったけど時間が少し余ったので、私から提案しご案内。

まずは人も少なくポカポカしたお堂の縁側に皆でこしかけて、ぼーっとお庭を眺める。

慌ただしいムードが少しずつ落ち着いてきて、それぞれが物思いにふける。

心が静かになったところで法堂にご案内。

皆で、そろりとお堂の中に入ると、どどーんと私たちを見つめる天井の龍。私自身何度来ても圧倒されるし、じーっと見ていられる魅力の龍。

すると私は何も言っていないのに、自らそっと仏様に手を合わせるお客様。

しばらくそこに一緒に佇み、静かに過ごして外へ。

母:Eri  ここに連れてきてくれて本当にありがとう。感動したわ。

父:これからのお客はいつもここに連れてきてあげるべきだ。

娘達:もう少し、庭を見ててもいい?

再びお庭を眺めながら、のんびりとお話。

禅が日本にやってきたこと。その頃は武士の世だったこと。彼らは戦場にいく準備を常にして、いつも生きるか死ぬかという決断の中に生きていた事。だから未来や過去じゃなくて、”今を生きる” ”今を味わう” ことが大切だということ。そしてそれが禅のフィロソフィでもあること。そして一期一会という禅の言葉。今回の私たちの出会いも最初で最後かもしれない。だからこの時間を大切にしたい、過ごしたい、と思っている事。スマホで友達とチャットするのも良いけど笑、”今”を大切にしてほしいこと。

なんとなく雰囲気が落ち着いてきたところで、娘達からのリクエストでなんちゃって坐禅タイム。皆で笑いながら、あぐらを組んでみて、坐禅した気分を体験。

お寺を出て、駅までの道。ちょっとは日本の事、禅の事伝わったかなぁ、、と思いながら、ふと振り返るとまたスマホ!おーい!!

京都駅に到着。気付けばランチを食べていない私たち。(←お客様のリクエストで)とにかく何か食べてくるわ、本当に今日は素敵な一日をありがとう!、と最後にくっしゃくしゃのチップ(しかもドル)をもらい笑、皆とハグして終了。

桜と名所は思いっきり楽しんでもらえて良かったけど、お客さんのペースにすっかり振り回されしまった自分。いつか建仁寺の龍さまの様に、心を動かせるようなトーク力を身につけたい。。

まだまだ修行の道は続くのでした。