京都の通訳ガイドEriの小話

”大切な人を大切な場所へ”をモットーに地元京都で通訳案内士をやっています。ツアーで出会った愛すべきお客様達とのエピソードや、改めて感じた京都、日本の魅力を綴っています。

冷静と情熱の間 のガイディング

 

 

この仕事をしていて、誤解を受けやすいのが”通訳案内士”という名称で

”通訳”とついているので、通訳する人と思われがちだが実際の業務での通訳は全体の10%も無いくらいだと思われる。

実際には、話す内容は全てガイド自身が考え、作って、現場で説明をしている。なので他の人が話した内容を通訳する仕事、ではなく、いわゆる外国語での観光ガイドなのである。

なので、伝える為の語学力も大切だが、最終的には話している内容が一番大切になる。

 

では何を伝えるのか。

ここで、大切なのが、”外国人目線で情報を編集して、伝える”ということだ。

これは、著書やあらゆる講演会で何度もアットキンソンさんが話されている事だが、日本人向けの観光情報を翻訳するだけでは、全く伝わらない。

なぜなら、日本人向けの情報は、秀吉や信長っと聞いてある程度ピンと来たり、わびさび、という言葉を知っていたりする日本人向けに作られているからだ。

多くのゲストは、天皇と将軍の違いや、なぜ天皇家は長く続いているのか、お寺と神社の違い、日本人の宗教は何か、そもそもサムライっ何、どうしたらサムライになれるのか、というところからスタートする。

 

例えば、ありがちな説明として

こちらのお寺は、徳川◎代将軍××が、●●の菩提を弔うために建立し、方丈は●●より移築された●●時代の傑作で、特にこの襖絵は、●●派の作によるもので国宝指定されている非常に貴重なものです。

と説明すると、次のような???がゲストの頭に渦巻く。

 

・徳川って誰?

・将軍て何?

・方丈って何?何の場所?

・●●時代っていつ?何?

・なんで襖に絵が書いてあるの?

・何の絵が書いてあるの?

・●●派って誰?偉いの?何がすごいの?

・国宝になるってどういう基準?なんでこれが選ばれたの?

・で、そもそもお寺って何?

・この場所の見所は何?

 

なので、ガイディングでは、まず上記のような?をクリアにするところから始まる。

つまり日本人向けの説明とは観点が全く違うという事だ。

 

 

大切なのは、ガイディングは自分たちの歴史や文化を伝える為にしているのではない。

あくまでゲストの旅に役立つから、旅が楽しくなる為に、しているということだ。

 

旅行でやってきた日本、目の前にあるこのお城や絵画、寺社仏閣、これは一体何んだろう??

その素朴な疑問に的確に答えて、さらには、見方がわかると楽しみ方が増える、そういう新しい視点を提供する、その為のガイディングだ。

もちろん、ローカルガイドとしては、地元の良さを伝えたいという情熱はたんま〜りある。しかしそれが中心になると、押しつけがましい、私すごいでしょ!というトーンになる。

だからといって、淡々と説明するのも、寂しい。ロボットで十分だ。

 

だからガイドは、この国、土地の文化や歴史を伝えるという情熱、そしてその場所への愛着をしっかりと胸に、でもあくまで相手のためのガイディングである、ということを忘れず外国人目線でのガイディングをする意識を持たないといけない。

ガイドの先輩に、”We"ではなく、”They"で説明した方が良いとアドバイスを受けた事がある。あくまで私たち日本人の話をしているわけだが、Weで説明をしすぎると、少し押し付けがましい、聞いている方がプレッシャーに与える事がある。彼らはこういう文化を持っている、こういう考え方をする、と客観的なポジションを取る事で、聞き手にも受け入れやすくなるのだ。

 

主観的な情熱と、客観的な冷静さ、

ガイディングではこのバランスが大切だと感じる。

 

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